新潟県加茂市で創業し、現在は新潟市秋葉区で醸造を行う革新的な酒蔵。1992年生まれの若き杜氏・田中悠一氏が手掛ける「荷札酒」シリーズは、新潟の淡麗さを保ちながら米の甘みと酸味を表現したモダンな酒質で全国的な人気を博している。「いまの食卓に合う日本酒」を追求し、新しい日本酒文化を創造している。
明治26年(1893年)、新潟県加茂市で創業。粟ヶ岳を水源とする加茂川の湧水を仕込み水として使用し、長年地元に愛される酒蔵として歩んできた。2000年代に田中家が「加茂錦」の名を守るため経営を引き継ぎ、醸造設備を新潟市秋葉区に移転。転機となったのは、工学部の学生だった田中悠一氏が酒造りを始めたこと。獺祭や十四代を飲んで日本酒の可能性に衝撃を受けた彼は、独学でテレビ映像から酒造りを分析・研究。「努力・分析・研究・実行」を信条に、わずか1年で東京・日本橋の長谷川酒店に認められる酒を醸造。2016年にデビューした「荷札酒」は、実際の荷札を使った斬新なラベルデザインと、精米歩合50%以下の純米大吟醸を中心とした高品質な酒質で話題を呼んだ。山田錦、五百万石、雄町など全国の優良酒米を使い分け、タンクやろ過方法、火入れの有無でバリエーションを展開。荷札は今も一枚一枚手作業で貼られている。若き杜氏の革新的な酒造りは、日本酒業界に新風を吹き込み続けている。